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December 03, 2005

ドラッグは世界をいかに変えたか~酒・たばこ・カフェインの歴史上の役割を理解する

ドラッグは世界をいかに変えたか―依存性物質の社会史

ドラッグは世界をいかに変えたか―依存性物質の社会史

今回は、ドラッグの歴史について解き明かしている書籍、「ドラッグは世界をいかに変えたか」を紹介します。

この本は、依存性のある意識に作用する物質、具体的には、アルコール、たばこ、カフェイン、アヘン、大麻、コカなどが、どのように見つかり、開発され、淘汰され、貿易や権力争いに使われ、国の統制に会い、税金の対象となり、生態系や社会体制を変化させていったのか、説明しています。

ふと気づくと、私たちはドラッグに囲まれて暮らしていることがわかります。

例えば、免税店を思い出してみてください。たばこ、お酒、ベルギーチョコ、コーヒー、どこをどう見回しても、この手のサイコアクティヴ製品(=精神に作用して、気分を高揚させる商品)ばかりです。

また、道を歩いていても、たばこの自動販売機、お酒の自動販売機、スターバックスにタリーズ、コンビニに山のように並ぶチョコレートの新製品など、昼となく、夜となく、誰もがサイコアクティヴ製品を口にしています。

一方、アヘン、大麻、コカはなぜか非合法です。しかし、ニコチンがよくて、大麻がダメだ、という違いを説明できる人はいないはずです。一方、アメリカでも、ソ連でも、禁酒法は失敗しました。

では、ドラッグは私たちにどのような影響をもたらしてきたのでしょうか?

本の内容をまとめると、以下の3つになります。

(この本、2,500円もする上、実はあまりわかりやすい構成になっていませんので、少し並べ替えてあります。ただし、内容はとても濃い本です)

1. サイコアクティヴ物質はもともと薬としての面があり、人に快楽をもたらすことで広がってきた
2. サイコアクティヴ物質は西欧がアメリカなどを侵攻する中で見いだし、貿易や管理の手段として、政治的に発展してきた
3. サイコアクティヴ物質は合法と非合法の間で揺れ動くが、一部のドラッグは最後まで生き残り、功罪が引きつづき議論されている

一つずつ簡単に説明してきます。

1. サイコアクティヴ物質はもともと薬としての面があり、人に快楽をもたらすことで広がってきた

植物系のドラッグは、もともと動物に食べられるときに酩酊状態をもたらすことで採取を防ぎ、繁殖するために発達したと考えられます。しかし、おかしなことに、人間が逆にそのドラッグ物質を活用することで、かえって繁殖し、発展してきたのは皮肉なものです。

本の中で、3大ドラッグをニコチン、アルコール、カフェイン、そして、その他の3大ドラッグとして、アヘン、コカ、大麻を挙げています。その他には、チョコレートや砂糖などがあります。

どのドラッグも、医者の正しい利用方法と管理の下で適切に利用すれば、それなりの薬効があると考えられています。しかし、実際には、快楽を目的に乱用し、生態系を荒らし、そのドラッグに目をつけた非合法のお金の流れを作りました。

これは今でも変わっておらず、合法なドラッグでも、大変な税金をかけられているのを見れば、いかに権力側が集金マシーンとしてドラッグを活用してきたのか、ということがよくわかると思います。

また、おもしろいインサイトとして、ドラッグと砂糖の親和性を挙げています。例えば、アルコール飲料やカカオは砂糖と組み合わせることで、その普及が進みました。

こうやって考えると、私たちは、確かに一日中、何らかのサイコアクティヴ製品を口にしながら、暮らしていることになるのかと思います。よほど気をつけない限り、全く摂取しないような生活習慣は作りづらいほど、文化と一体化してしまっているわけです。

2. サイコアクティヴ物質は西欧がアメリカ・アフリカなどを侵攻する中で見いだし、貿易や管理の手段として、政治的に発展してきた

しかし、このサイコアクティヴ物質の発見は、貿易を活発化させ、植民地施策を加速させました。ヨーロッパの列強はたばこやコーヒーを栽培するために植民地を支配し、奴隷を確保し、そのドラッグをせっせと本国に輸出するわけです。

また、危険な航海や戦争の危険などを紛らわせるために、ドラッグは利用され、普及していきました。そして、今でも、例えばカフェで、濃いコーヒーを飲みながら、チョコレートをつまみ、たばこを一服する、などという光景が日常化しています。

その結果、アルコールに変換させるための砂糖、穀物を含め、たばこやコーヒーの栽培は、森林伐採、土地の消耗や浸食、化学薬品の廃液流出、森林の破壊などをいまでも助長しています。人類生態学から見た場合、ドラッグ作物の集中的な栽培は、人口を維持するために必要な食料の生産をおろそかにし、飢餓を拡げる結果になります。

もっとも、こういったドラッグが普及したことで、その害で、少なめに見積もっても、人口が5億人は地球全体で少なくなったそうで、その分は地球破壊を遅らせている、という皮肉な結果もあります。

3. サイコアクティヴ物質は合法と非合法の間で揺れ動くが、一部のドラッグは最後まで生き残り、功罪が引きつづき議論されている

これらのドラッグは、子どもでも飲めるカフェイン飲料から、製造、販売すら禁止されているヘロインまで、合法・非合法のいろいろな区別があります。その区分はどこから来ているのでしょうか?

まず、特殊なのがカフェインです。カフェインだけは、各種ドラッグの中で、特権的な乱用を許されています。

その理由は非常に簡単で、どうも、功罪のうち、功のほうが今のところ大きそうだから、という理由です。かなりの量を乱用すれば別ですが、当面はカフェインが理由である、という命に関わるほどの病気が見つかっていないのです。一方、抗鬱の働きがあり、運転を覚醒し、気分を落ち着かせます。

結果、ありとあらゆる場所に、喫茶店やカフェの乱立を招くわけです。

比べて、アルコールに規制があるのは、酩酊により身体的な衰え、投与中の反社会的行動、感情的な依存などが明確にあるためです。薬学的な分析によると、アルコールはヘロインやコカイン、マリファナなどよりも毒性が強く、アルコールがなぜ合法かということについての疑問を投げかけています。

たばこは依存性が強く、特に肺ガンや、視力低下、暴飲の助長などの弊害があり、同じく、規制の対象になっています。最近、勤務時間中のたばこの喫煙は厳しくなってきましたが、ただ、お酒ほどは規制されていないのは、お酒ほどの毒性がないからのようです。

もっとも、アルコール、カフェイン、ニコチンが合法で、アヘン、大麻、コカが違法だというのは、実は根拠がないことと言われています。

どうもその違いは、指導層にすでに浸透しいるドラッグか、そうでないかの差のようで、指導層が自分の快楽をわざわざ禁止するようには動かないため、これから先も合法のままでしょう。

さて、ここまでドラッグの話をまとめてきましたが、やはり、ドラッグは摂取しないにと超したことはないわけです。私は2002年を境にたばことお酒の摂取を一切やめてしまいました。結果、かなり人生が快適になったような気がしています。

もともとドラッグは、指導層が快楽のため、そして労働層が毎日のつらい生活をごまかすために使われてきたものです。そこにお金の流れが生まれ、指導層が搾取の手段として活用し、知識層が害を訴えて反対する、という構造が永遠と繰り返されています。

ドラッグを摂取する習慣がない人はほとんどいないと思いますが、一度、ドラッグの本質は何か、このような本を読んで、振り返ってみるとおもしろいと思います。

2005 12 03 [3.お勧めの書籍] | 固定リンク

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コメント

投稿者: 屈原 (Dec 14, 2005, 4:49:24 AM)

こんにちは。いつも楽しみに読ませてもらっています。
その分析の鋭さにはいつもなるほど! と思わせられています。

そこで、今回のテーマの「ドラッグ」とはちょっと違うの
ですが、ムギさんに挑戦状というか、次のテーマへのリクエストといいますか、を送ってみます。

以下の唄はネットで流れていたものですが、ムギさんなら
これをどう解剖しますか?ムギさんならではの多角的な
鋭い分析があるのを楽しみにしています。
(勿論、お忙しいでしょうので興味
ないというのでしたら無視してください)


---------------------------------------

『2chの少女の唄』

 (転載・修正・曲付け・フラッシュ作成大歓迎!) 

1.
わたしの名前が2chにでましたよ
ところどころ伏字ででています

色々悪口かかれてる どうしよう
本当と嘘と織り交ぜて かかれてる

明日はどこで首つろうかしら


2.
わたしの名前が2chにでましたよ
学校まで伏字ででてます

本当と嘘の区別なんて ひろゆきさん
分かる人などどれくらい いるのかな

明日はどこで首つろうかしら


3.
わたしの名前が2chにでましたよ
クラスのみんなが見ています

昨日は彼氏がやってきて わたしから
もう信じられないといって 去りました

明日はどこで首つろうかしら


4.
わたしの名前が2chにでましたよ
削除依頼をだしました

普通の人からはだれのことか わからない
そういわれて依頼はなんと 断られました

明日はどこで首つろうかしら


5.
わたしの名前が2chにでましたよ
星猫さんに転載されました

わたしが見ていることを知って 喜んで
もっと色々ひどいことを 書かれました

明日はどこで首つろうかしら


6.
わたしの名前が2chにでましたよ
親にもついに見られました

友達もどんどん減っていき その上に
親にまで見離されたら どうしよう

明日はどこで首つろうかしら


7.
わたしの名前が2chにでましたよ
百年たってもは消えません

きっとわたしがお母さんに なったとき
きっと子供がこのことを 見つけるだろう

明日はどこで首つろうかしら


8.
わたしの名前が2chにでましたよ
誰が書いたか分かりません

友達も親も彼氏さえ 信じられず
みんな疑ってしまうわたし 悲しすぎる

明日はどこで首つろうかしら


9.
わたしの名前が2chにでましたよ
わたしの人生をもてあそばないで

わたしは今までただ普通に 生きてただけ
どうしてこんな目にあうの? 分からない

明日はあの場所で首をつろう

投稿者: ムギ (Dec 14, 2005, 7:12:16 PM)

屈原さん、こんにちは。

この歌、おもしろいです。確かに、ネットの匿名性と、Self Estimeの危うさ、さらにそこから傷つくこと、言葉が一人歩きする怖さがありますね。

すみません、星猫さん、って何でしょうか?

ただ、これを題材にするかどうかは、特に2chという特定の掲示板に対する批判と取られる虞がありますので、ここで簡単にコメントするにとどめさせてください。

もともと、私たちは人の批判をしてはいけない、ということを教わってきたわけです。それは、因果応報という言葉がありますが、自分が人を無意味に陥れたり、批判したりすると、回り回って自分の評判が落ちるからですね。

ところが、このループがインターネットの匿名性、ということで切れてしまったわけです(本当は切れていないんですけれどもね)。

そうなると、逆に匿名でのそのような批判は、する人が筋が悪いわけだし、それを信じる人も同じくらい筋が悪い。

私がその少女にするアドバイスは、「いいリトマス試験紙になって良かったね。あなたよりも2chを信じる人は、全部関係を精算してもいいくらい。すべての人間関係をやり直せるいいチャンス」くらい、言ってしまうかもしれません。

人と比較をして、相手の低さを確認して、自分が安心するタイプの人は、幸せではない、という統計結果も出ています。

自分の娘であったら、笑い飛ばせるくらい強くなってほしいと思いますし、逆に、そういうことを言われても自分の自信が自分でも、まわりでも揺るがないくらいの強さを育成していくことが、匿名掲示板そのものを問題視するよりは解に近いのではないかと思いますが、どうでしょうか?

投稿者: 屈原 (Dec 15, 2005, 2:22:38 AM)

ムギさん、スマートかつ本質を捉えたお答えで、さすがだと改めて感心させられました。


 もし、人を無意味に批判したりしないという”道徳”が、人を批判することが結局は自分に帰ってくるという、功利主義にささえられたものならば、匿名での批判によって自分に帰ってこない場合に、この道徳はどれほどの強さを持ちうるのかとも思えます。
 この脆弱な道徳を持っていない「筋が悪い」人を切り捨てることは一つの方法ですが、もし世の中の95%の人が「筋が悪い」人になったときに果たしてこれらの人を切り捨てて暮らしていくのは難しいのではないかと思うのですがどうでしょうか?

 ムギさんの少女へのアドバイスは、一見すると少し非情なように聞こえますが、よく考えてみると最も的を得ているアドバイスだと思います。人の言うことに一喜一憂せずに自分の信念を持って強く生きなくてはならないということはこれも私達が
教わってきたことだと思いますが、これからはその要求が一層強くなっていくのかも知れませんね。

プロフィールを明らかにしているムギさんの立場で匿名のものを取り上げるのはちょっとハンデがありますし、リスクもありますね。このような危険球を投げてしまって申し訳なかったです。

これからも楽しみにブログを拝見させていただきます。

投稿者: こめじ (Dec 22, 2005, 6:57:51 PM)

おお、ちょうど今日、資格試験のために通っている学校のクラスメイトたちとお昼を食べ、コーヒーをがんがん飲みながら、
「コーヒーを何杯も飲みたくなる心理」について話していたところでした。
この本もぜひ読んでみます。

投稿者: ムギ (Dec 25, 2005, 8:50:25 PM)

こめじさん、こんにちは。

コーヒーはですね、まぁ、昼間に飲めるお酒だと思えば、いいのかと思います。

今のところ、健康にものすごく悪い、ということが証明されていないので比較的自由に流通していますが、それでも、私の身の回りにいるドラッグ嫌いのひとたちら、口にしませんね。

とりあえず、ドラッグの取りすぎはなんでも害になるので、気をつけてください!!

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