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September 04, 2005

NANAはなぜブレークしたのか?

今週は、今話題のコンテンツ、「NANA」がなぜブレークしたのかについて考えてみたいと思います。映画は昨日、封切りになりました。漫画は2,500万部以上、販売されているそうです。

NANAとは、りぼんの姉妹月刊誌「Cookie」に2000年前後から連載が始まった少女漫画です。作者は矢沢あい。NANAの前からも、ご近所物語、下弦の月など、これまでもヒット作を書いていた作家です。

NANAのストーリーは、ブラストとトラネスという2つの音楽バンド、そしてナナと奈々(通称ハチ)の2人の女性を軸に、「恋愛」「自己実現」「家族トラウマ」「成り上がり」「上京」「ドラッグ」「売春」「できちゃった婚」「三角関係」など、10代の少女たちに読ませるにはややえぐいテーマを扱いながら、グループの青春群像を扱うものです。

出演するメインキャラだけでも、すごい数。ブラストが女性1人、男性3人、トラネスも女性1人、男性2人、そこに奈々が加わり、女性3人、男性5人がストーリーを奏でます。さらに、この男女8人は、みんな恋愛が下記のように、順列組み合わせになっています。

ブラストのナナ-トラネスのレン
ナナの友人奈々-現恋人トラネスのタクミ-元恋人ブラストのノブ
トラネスのレイラ-現恋人ブラストのシン-元恋人ブラストのヤス

さて、前置きはさておき、なぜこの漫画がこんなにブレークしたのか、私が考えた要素を書き出してみました。

要素1 出演キャラクターの書き込みと種類が巧みで、読者が誰かには共感できるようになっている
要素2 音楽バンドという、「現代のもっともわかりやすい若者向け出世物語」である
要素3 矢沢あいのファッション+地方路線が従来はマイナー路線だったのが、共感する若年層がどんどん育ってきてメジャーになった
要素4 題材が音楽、というマルチメディア展開に向いた商材であった

以下、簡単に一つ一つ、解説します。

要素1 出演キャラクターの書き込みと種類が巧みで、読者が誰かには共感できるようになっている

この登場キャラクターの中には、いろいろな種類と対立軸をわざと書き込んであります。

・幸せな家庭で育った人たち VS 不幸な家庭で育った、あるいは親がいない
ex. 家族に恵まれた奈々・旅館の跡取り息子ノブ-両親のいないナナ・親に捨てられたシン・捨て子のレン

・天才肌の人たち VS 努力家の人たち
ex. 天才組 レイラ・タクミ・ヤス - 努力家組 レン・ナナ・ノブ

・自立志向の女と依存志向の女
ex. ピルを飲んで絶対に妊娠しようとしないナナ - タクミとできちゃった結婚をする奈々

どの立場であっても、読者が自分をその相対図の中でポジションをおき、そのドラマの中に入り込めるように設計されています。

要素2 音楽バンドという、「現代のもっともわかりやすい若者向け出世物語」である

ブラストも、トラネスも、「音楽」という手段を使って、メガヒットを飛ばし、名声とお金を得る、というのが出演者たちのモチベーションです。

そう、音楽は資本も学歴もいらないベンチャービジネスだからです。だから昔から、地方から上京して一山当ててやる、というストーリーとして成り立ち、あこがれるわけです。

なぜなら、昔は「一所懸命働けば出世できる」という価値観がありましたが、最近はNEETを含め倦怠感が広がっており、よりわかりやすい、一発逆転手段として、音楽、というところに光を見いだしやすいのでしょう。

要素3 矢沢あいのファッション+地方路線が従来はマイナー路線だったのが、共感する若年層がどんどん育ってきてメジャーになった

漫画はどちらかというとこれまで、なんだかんだ言って、インテリ向け路線が多かったと思いませんか? それは、書き手の多くが大学卒業のインテリだったから、柴門ふみ、川原泉、里中満智子、清水玲子と言ったような、ちょっとまじめな雰囲気が多かったと思います。

そうすると、歴史物やキャリアウーマンもの、SF物に名門私立物など、なんだかんだ言って、ややインテリ向けの漫画が多くなるわけです。

ところが、矢沢あいはファッション専門学校出身で、ひたすら音楽やファッションなどを基軸とした世界観を書き続けました。そこに、共感するファンが育ってきて、ついてきたわけです。

要素4 題材が音楽、というマルチメディア展開に向いた商材であった

NANAかブレークした理由の一つに、かなり早期からミュージシャンの共感と推薦を仰いできた、という経緯があります。ミュージシャンたちがまさしく、これまでの自分たちの苦労と合わせて共感できる漫画でもあったし、積極的にアルバム作りなど、バックアップをしてきたわけです。

今回も、映画が中島美嘉の主演でタイアップCDが作られ、レイラがオーディションで選ばれて、同じくタイアップCDが販売されます。

とはいえ、映画の方は、正直、ドラッグとか売春などの毒のある部分をほとんど抜いて映像化してるので、やや物足りなさを感じました。さすがに、マルチメディア展開でも、R指定をするわけではないので、限界があるのかもしれません。

元々私がNANAを知ったのは去年の春くらいに、コンビニで「1,000万部突破」という漫画の帯に惹かれて、とりあえず仕事柄もあり、なんだか知らないけれども読んでみよう、と思って買ったのがきっかけでした。

当時はまだ、一般紙には取り上げられない物の、若年層はほぼ知っていた、ただし30代以上で知っている人はいなかった、という段階でした。

最初、いきなり10巻から読み始めたときは、正直、世界観を全く、理解できませんでした。それ以上に、ここまで毒がある漫画を若年層が受け入れている、という方がより驚きでした。

ただ、我慢してとりあえず全巻読んでみたところ、少しずつ理解が進んできて、逆に私が周りに「こういうはやっている漫画がある」と紹介するような形になっていました。だからこそ、1年間で1,000万部が、2,500万部にまで広がったのでしょう。

しかし、はやりのコンテンツは世相を反映する、と言われますが、NANAがここまで受け入れられる、という風潮には、やはり現代に対する夢の狭さと毒を感じてしまうのは、ちょっとこの現象を斜めに見すぎているでしょうか?

とりあえず、機会があれば、漫画でも、あるいは映画でも、目を通してみてください。特に、このブログを読んでいるようなセグメントの人には、新鮮な驚きがあると思います。

2005 09 04 [3.お勧めの書籍] | 固定リンク

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あんまりクサクサしたブログにしたくないのだけれども、ちょっと書いてみたいことがあったので一つ。 わか 続きを読む

受信: Sep 18, 2005, 9:01:40 PM

コメント

投稿者: 涼風 (Sep 4, 2005, 11:14:22 PM)

こんにちは、ムギさん。いつもブログ読ませていただいています。

僕はこのマンガを読んだことはありませんが、今の若い人たちにとって音楽が成り上がる手段になっているというのは意外です。

私が高校生のころも“バンド・ブーム”があって、その頃はBOOWY(綴りが違うかも。氷室と布袋のバンドです)の絶頂期で、誰もがバンドをやりたがっていました。

でもその頃の雰囲気と『NANA』の描く雰囲気とは違うのでしょうか。

BOOWYが流行っていた頃というのは、バブルの頃なので、日本のバンドが作り出す音楽CDがかなり売れるようになり、洋楽市場を追い抜いた頃だと思います。

それ以前の世代とは違い、私たちの世代は「洋楽」よりも「ジャパニーズ・ロック」を聴きはじめていました(私は違ったけど)。

そうした市場としての成熟と結びつかないかもしれないけど、あの当時のバンドブームには社会の閉塞感はあまり感じられなくて、むしろ社会全体の豊かさ・浮かれている感じと「ジャパニーズ・ロック」とが雰囲気的に親和的だったように思います(米米クラブとか)。

でも今回の記事を読ませていただくと、NANAというのはちょっと違う感じですね。むしろ社会・経済的に日本が閉塞しているからこそ、若い人たちは音楽にしか目が向かないようになっているんですね。

そういえば、80年代によく読んだロック雑誌でイギリスのミュージシャンが「イギリスの労働者階級の若者には、成功するには音楽かサッカーしかない」と言っていました。

日本は20年後になって、その当時のイギリスと同じ状況になったのかな?とちょっと思いました。

突然お邪魔して、まとまりのない文章でスミマセン。

涼風

投稿者: izumin (Sep 5, 2005, 5:23:46 PM)

とっても面白かったです。私は読んだことなかったんですが、今度図書館ででも読んでみたいなと思いました。

>要素3 矢沢あいのファッション+地方路線が従来はマイナー路線だったのが、共感する若年層がどんどん育ってきてメジャーになった

これってハチクロ(ハチミツとクローバー)のブームにも言えますよね。ハチクロはもろに美大が舞台ですし。深夜になってるアニメーションのほうもかなり「クリエイティブ」な方たちが参加してますね。映画化もされるそうです。

それから「のだめカンタービレ」もすごいですけど、あれはかなりインテリなマンガですけど、従来のインテリマンガの読者層とはまた違う感じがします(CDブックまでしっかり買った私ですが)。

ちなみに、ハチクロは360万部、のだめは500万部だそうです。やっぱりNANAがすごすぎますね。

投稿者: ムギ (Sep 5, 2005, 10:59:28 PM)

涼風さん、こんにちは。

そうなんです。NANAは米米とかの時と違って、やはりイギリスのサッカー・ロックと同じ雰囲気がするかなぁ、と感じています。

以前は階級の話や不平等の話はタブーだったのが、最近はいろいろな分析や本が出てきたような気がします。

日本の場合、階級社会を認めないことにより、逆に本来、ノブレスが追うべき義務を放棄していている、という話を読んだ記憶があります。

イギリスだと、建前上、戦争になったら一番先に国民を守るのが貴族、ということですので。

もうすぐ選挙ですし、少し、各党のマニフェストをじっくりと読みながら、そういった問題も合わせて考えてみるとおもしろいと思いますが、いかがでしょうか?

投稿者: ムギ (Sep 5, 2005, 11:12:14 PM)

izuminさん、こんにちは。

いやぁ、ハチクロものだめも、確かにNANAに比べると少ないですが、普通の書籍に比べたら、ものすごい数ですよね。

それだけ、漫画の方が潜在人口が多いという事なのでしょうか。

そういえば、漫画のダウンロードはパピレスとか楽天で多少はありますが、あんまりメジャーじゃないですね。

やはり、420円だと、ダウンロードするよりも髪の方がいいんでしょうか? 逆に、アニメなんかはもっともっと、オンデマンド化するかもしれませんね。

これからも、いろいろな漫画が出てくるのでしょうね。とても楽しみです。

私は後は個人的には、デスノートが好きです。これも500万部以上売れているようです。

他に最近のヒットだと、あずまんが大王が300万部だそうです。

とはいえ、漫画全体ではどのくらい今、売上があるのでしょうか? 後で機会があったら調べてみようと思います。

投稿者: 涼風 (Sep 7, 2005, 12:18:48 AM)

ムギさん、お返事有難うございます。

>日本の場合、階級社会を認めないことにより、逆に本来、ノブレスが追うべき義務を放棄していている、という話を読んだ記憶があります。

認めないというより、「ノブレス」自身が自分達が社会の上層であることに気づきにくいのが日本なのかなという印象が僕にはあります。

欧米だと身分・階級の区別がはっきりしていて、行く店などがはっきり分かれているそうですね。

でも日本だと、たしかに値段の高い店に庶民が行くのは躊躇するけど、それは「行ってはいけない」のではなく、お金がないから単に「行けない」だけなのだと思います。

つまり、伝統的な身分の区別・ハッキリした生活様式の違いが規範として流通していないので、「お金のある人」と「ない人」の違いはあっても、それが欧米ほど絶対的な区別としてこれまでは意識されてこなかったというか。

でも実際には階級は再生産されていて、お金・家柄のある家の子供がやはり経済的・社会的地位のある職業に就く確率はかなり高いと聞いたことがあります。

ただその地位の継承は学校の公正な試験制度を通じてなされるので、上層の人たちは自分たちが生まれた家庭環境の有形・無形の財産を受け継いで地位を得たとは思わず、単にルールにのっとってゲームを行ったとしか思わないのかもしれません。だからこそ「自分は社会の上層に属しているから、それに対応する社会的責任がある」ということは日本の上層は思わない、という話を私も聞いたことがあります。

それに対して下層にいる人たち、とくに若い人は自分達のおかれた境遇にとても敏感になるのでしょうね。

本来なら輝かしい人生があるのに、あるいは自分と同年代の人たちにはそれが約束されているのに、なぜ自分だけはこんなつまらない人生なんだと悩むのだと思います。

人生に希望は持てないけど、かといって若いだけに完全に諦めることもできない。それだけに「非現実的」な夢にすべてを賭けるという、冷静さを失った行為に走りやすいのかな、と思います。

僕自身は、生まれた境遇にかかわらず、その人次第でチャンスは訪れるという考え方が好きだし、若い人にもそうでない人にもそう想って欲しいと想います。

でもそう想うことが簡単ではないことも自分を振り返るとわかるので、安易に他人にそうだとは言い難いのですけど。

だからこそ今の政治家の人たちには、どんな境遇にある人にも希望がもてるような、そういう「セカンド・チャンス」な思想の大切さを分かって欲しいと私は思っています。

投稿者: hideto (Sep 10, 2005, 10:35:56 PM)

NANAはなんか、CDで色んなアーティストが歌ってたのですごかったですね。
ああいうのはよさそうです。

漫画はやっぱ、本の方がいいですね。
データだと見づらいんで。
値段も300円切らない限りは、本でしょう。

デスノートは2巻まで立ち読みしましたが、面白いですね。
500万本も行ってましたか。
あずまんがもそこまでとは・・・。
ヒットと言えば、ドラゴンボールはすごそうです。
少女漫画系はあんまわかりませんが、CLAMPですね、映画化されてますし。
個人的には攻殻機動隊(イノセンスの方が有名?)とかプラネテスとかにハマリやすいです。
そんなわけで(ぇ)、漫画の市場とかも気になりますね。

チャンスに関しては、ものにしてる人がいわゆる、起業家ですかね?
終末、情報などもありますが。
神田昌典的には、ここ10年で、今まで当たり前のようなものが崩れる、みたいなことを書いてたので、逆にチャンスは増えるかもですね。
でも逆に、ドラゴン桜のようなマンガがでてきて、エリート組の仲間入りのチャンスも!?なんて。

投稿者: ムギ (Sep 12, 2005, 12:53:01 AM)

涼風さん、こんにちは。興味深いコメントをありがとうございました。おっしゃるとり、少し根が深い問題だと思います。

今晩、ちょうど選挙の結果が出ていますね。少しずつですが、それでも、日本もセカンドチャンスが増えてきているとは思います。

問題は、若年層よりも、さらに30代後半以降のセカンドチャンスかと個人的には思っています。

この問題は、もう少し考えてみたいです。

投稿者: ムギ (Sep 12, 2005, 12:54:55 AM)

hidetoさん、こんにちは。

そうなんです、あと10年くらい、いろいろな枠組みが壊れていくのでしょうね。

自分はともかく、子どもにどうやってそういうものへの乗り切り方を教えていくか、というほうがなかなか頭が痛いです。

選挙の後を注意深く見守りたいですね。

投稿者: カワマリ (Sep 13, 2005, 12:27:39 AM)

ムギさんがNANAを解説してらしたので、へーと思って読ませて頂きました。この作品はミュージシャンとのタイアップによるメディア露出度が多くて、認知度が高まったんだろうな~とヨンでおりましたが、矢沢あいの10年来のファン(小学生の頃から)である妹に言わせると、「矢沢あいは、昔から人気あったよ!」とのこと。
なので、要素3「従来はマイナー路線」っていうのが、ちょっと意外な分析でした。マーケットという視点で見ると、そうなのかしら。素人なのでよく分かりませんが。
でもねー確かに、最近のNANAの勢いはスゴイですよね。私も昔、彼女の作品を愛読していたので、ちょっと嬉しいです。

投稿者: ムギ (Sep 14, 2005, 11:25:13 PM)

カワマリさん、こんにちは。

そう、そんなイメージでした。小さい頃からのファンがどんどん積み上がって、爆発する感じ。

なので、その路線にずっといた人にとっては、もちろん、ぜんぜんマイナーではないんです。

小学生の頃は、漫画がないと夜も明けない、という感じでしたが、大人になるとなかなかどんな漫画がおもしろいか、すら選ぶ暇がなくなってしまいますね。

少しだけまたこれを機会に、漫画を復活させようかなぁ、なんて思っています。

投稿者: 谷ぐく (Sep 18, 2005, 9:19:50 PM)

ネットの世界では初めまして~。
なんか意味深な挨拶ですが、ムギさんはちみっこい私に会った事があるはずです。確か娘さんとぷよぷよった気が・・・(笑)
『ぞぞ』と言えば通じるでしょうか?(^^;

今回『NANA』に関連して、当たらずとも遠からずな記事を書きました。
参考&トラックバックさせて頂きましたのでご報告に参った次第です(←コテコテ)
宜しかったらご覧下さいませませ♪

記事の固定リンクは
http://stn.tea-nifty.com/sinbun/2005/09/post_11f9.html
です。

では、お邪魔しました~☆

投稿者: ムギ (Sep 19, 2005, 10:01:56 PM)

谷ぐくさん、こんにちは。

はーーーい、もちろん、よく覚えていますよ。そうか、もうあれから5年くらいたっているのかな? ブログ作っているんですね。楽しそうでいいですね。うちの娘もサイトあるらしいですが、親にはろくに教えません(笑)。

そう、谷ぐくさん姉妹には、たぶん、NANAはだめでしょう。「のだめ・・・」のほうがおもしろいのでは?

漫画にしろ、本にしろ、映画にしろ、擬似的な世界観を子どものうちにどんどん体験するのはいいことだと思うので、どんどん補ってくださいね。

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