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February 05, 2005

口コミが広がる要件-ティッピング・ポイントとは何か

tipping point

今回は、Tipping Pointという概念を紹介したいと思います。

ティッピング・ポイントとは、ちょっとした条件が揃うと、まるで人間の行動や購買活動が伝染病のように変わっていく、ということを示したものです。

この本の邦訳は「なぜあの商品は急に売れ出したのか」というやや不思議な名前で出ていますが、内容はほぼ同じのようです(私は和書の方は読んでいません)。

このティッピング・ポイントという概念は、キャズムと合わせて参照するとおもしろいと思いますし、実際、本の中でもキャズムについては何回も引用されています。

では、ティッピング・ポイントと何か。本の中ではハシュパピーの靴、セサミストリートの人気、NYの犯罪率の低下などを事例に上げ、下記の3つがその発生要件であるとしています。

(1) 少数の目利きに影響を与えること
(2) その内容が記憶に粘ること
(3) ちょっとした「こと」が行動変化を手助けすること

以下、具体的に説明します。

(1) 少数の目利きに影響を与えること

これは、キャズムを超えて大きく流行するためにはEarly AdaptorとEarly Majorityの間に翻訳者が必要であり、そのためには人付き合いがよい人、目利き力がある人、敏腕セールスマンなどがその「何かの流行の火付け役」として登場する、ということです。

例えば、卑近な例ですがこのブログもその一つです。ここでフォト・リーディングやキャズムなど、あまり知られていない概念を紹介することで、そういうことが大好きな人たち(Maven、通な人、という略でしょうか)から爆発的に広がっていきます。

よく6-7人を経るとみな知り合い、といいますが、よくよくルートを検索すると、だいたい間にハブとなり、何百人とも交流があるような人が間にいるということがわかってきています。

伝染の発端は、こういう人たちが自主的に行動を始めるところから始まります。

(2) その内容が記憶に粘ること

個人的には、この要件が一番新鮮でした。記憶に粘る、というのは聞いた後でだんだんと浸透する、忘れられない、興味が持続する、ということです。

具体的な例ではセサミ・ストリートのパペットが事例になっていましたが、日本でも例えば「燃焼系・燃焼系・・・」とか「お金は大事だよ~~」などが記憶に粘る典型例だと思います。

みな、忙しく、興味が持続しないので、以下にその興味が一度記憶にとりついて、じわじわと広がることができるのか、というのが大きく影響に左右するようです。

(3) ちょっとした「こと」が行動変化を手助けすること

おそらく、作者が最も言いたかったのはここだと思います。

(1)と(2)は努力でなんとかなるのですが、最も不確定要素が強いのは、実はここの部分です。

流行や行動の変化を伝染病になぞられた場合、そのビールスに応じて繁殖がしやすい環境と、そうでない環境があるのです。

例えば、NYの犯罪率を大幅に下げたこととして、「地下鉄の落書き・窓が割れたもの」を徹底的に排除したことを上げています。なぜか、汚い地下鉄だと同じ人間でも犯罪をしがちになるし、清潔なところだとそうではない、ということでした。

しかし、それがその「こと」だと気付くまでにはいろいろな試行錯誤があったわけです。Suicaの傾きもそんなTippint Pointの一つだと思います。

これは、やはり無意識にどれだけ影響するのか、ということだと思います。もともとこの伝染病の概念はリチャード・ドーキンスが主張する「利己的な遺伝子」に非常に近いものがあり、ちょっとした背景の差が、そのミーム(文化的な遺伝子)の繁殖力を左右するということだと思います。

そして、マーケターや施策実行者がもっとも注力しなければならないのは、(1)と(2)をそろえた上で、(3)の自己繁殖が開始するような環境を試行錯誤の中で整えていくことではないかと思います。

よく、コンピューターによるCRMがうまくいかない、という話の中で、統計処理を使うのではなく、目利きの人を見つけて、その人が買った商品を予めたくさん仕入れて品切れに対処する、という手法があると言うことを聞き、目から鱗が落ちる思いでした。

これは、(1)の考え方を応用した方法だと思います。

所詮、人間も生物の一種なので、どうやって生物学的な観点から行動を導くか、という研究がこれからもっともっと進んでくると思います。

身の回りのティッピング・ポイント、意識して考えてみてください。

2005 02 05 [3.お勧めの書籍] | 固定リンク

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コメント

投稿者: じーじ (Feb 8, 2005 10:52:19 AM)

はじめまして。

ワーキングマザー・スタイルでのムギさんのインタビューを
拝見しました。

ムギさんの毎月の書籍費が15万円(!)ということを知り、
これはぜひ質問したいと思い、こちらにやってきました。
私も本を読むのも買うのも大好き、しかも研究職という
ことで、私の部屋は完全に本で埋もれてしまっています。

ムギさんは、買った本の整理はどのようになさっているの
でしょうか。読んでしまって不要なものは売るとしても、
かなり残るのではないかなあと思うのですが…

本や物の整理について、そのうちブログでも書いてくださ
ると大変ありがたいです。時間の管理も、物の管理も苦手
なのですが、さらに忙しくなりそうで、これは本腰を入れ
てなんとかしないと!と思っているところなのです。


投稿者: ムギ (Feb 8, 2005 11:03:12 AM)

じーじさん、はじめまして。

そうなんです、研究職やっていると、本で埋もれてしまいますよね。こちらも同じです。

埋もれないようにするために、本のスペースを決めていまして、そこに入り切らなくなった本は無条件に売ることにしています。

あと、本もCDで買う物が多いので、こちらの方はそれほどスペースを取りません。こちらもお勧めです。

とはいえ、私も時間の整理はともかく、本や物の整理はあまり上手な方ではないので、そのうちボチボチとかかせてください。

とりあえず、捨てる、捨てる、捨てる、に限るのかな、と思っています。

投稿者: ムギ (Feb 8, 2005 11:07:32 AM)

というわけで、とりあえずアンケート作ってみました。どんな結果になるか、楽しみです。

投稿者: じーじ (Feb 9, 2005 9:26:52 AM)

お答えありがとうございます!

アンケートにも答えてみました(^^)

本のスペースを決めるというのは、いいですね。
私はつい床でも机でも、どこでも積んでしまい
ますので・・・

ああ、しかし問題はどの本を捨てる(売る)か決
めること。本を捨てるのって、私にとってはもの
すごい決断なのです。

投稿者: ムギ (Feb 9, 2005 5:47:19 PM)

じーじさん、こんにちは。

そうなんです。会社でも、家でも、とりあえず収まらないものはどんどん捨てる/処分するようにしています。

本を減らすといいのが、どこに何があるのかわかるようになります。

すると、たくさんあってアクセスできないよりは、少しでアクセスできるようにしたほうがいい感じになりますよ!!

試しにどーーーんと、処分してみてください。最近はネットの古本売買が充実してきているので、どうしても欲しいものは、だいたいまた買えますしね。

投稿者: smooth foxxx (Feb 10, 2005 1:17:25 PM)

私もアンケート答えました(笑)。
ところで、ちょっと話が違うかもしれませんが、20年位前にゼミの卒論で「ファッションの流行」を無理やり「101匹目のサル」(「生命潮流」)の話と結びつけてでっち上げたことを思い出しました。

投稿者: ムギ (Feb 10, 2005 6:35:39 PM)

smooth foxxxさん、こんにちは。

わはは、楽しそうな卒論ですね。でも、ファッションの流行は典型的なミームだからいいのではないでしょうか?

ミームの話もそのうち機会があったら、もう少しちゃんと書きますね。

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