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December 18, 2004
紙の辞書 vs 電子辞書~英和活用大辞典とトンネル・デザイン
今回は紙と電子辞書の利点、欠点に関する考察です。IT化は便利ですが、「トンネル・デザイン」という、怖い弊害があります。さて、これはいったいどういうことでしょう。身近にある、紙の辞書と電子辞書の違いから考えてみます。
私は学卒以来、実は圧倒的な電子辞書派で、ソニーの初代電子ブックを10数年前にアメリカの研修に持っていって、「いったいそれは何だ?」とアメリカ人にむちゃくちゃ聞かれたものでした。それから、電子辞書はEBも含めて、何台買い換えたか数知れません。
最近のお気に入りはカシオ電子辞書 XD-H9100で、英和活用大辞典が入っているためです。
英和活用大辞典は、主要な単語について、コロケーションと呼ばれる、よくある用語同士の組み合わせを38万例も載せてくれており、ふだん英語を書く上では欠かせない辞書になっています。しかし、紙の辞書は大辞典なので、かなり厚くて重いので、買っていませんでした。
しかし、最近、各種の加速学習の概念を照らし合わせるうちに、つくづく思いました。「なんだ、電子辞書は所詮、紙の辞書にはトータルではかなわない」。そして、あわてて英和活用大辞典と英英、和英の紙の辞書を家と会社に一組ずつ、買い直した次第です。
では、なぜ電子辞書は紙にかなわないのか。
電子辞書が紙よりも優れている点は下記の点です。
○検索性
検索が圧倒的に早い
○携帯性
薄い、小さい
ところが、加速学習の理論(=人間の処理能力は潜在的にはすばらしく、特に画像認識は文字認識の100倍の力がある)から考えると、以下の点が致命的です。
×一覧性がない
英和活用大辞典で、例えば動詞+単語の時や、単語+前置詞の時に、毎回サブメニューに戻って検索するのはめんどうでした。しかも、画面が小さいので、ほんの少ししか見ることができません。
×場所の特徴がない
言われて私もああ、と思ったのですが、辞書って、ページの厚さの雰囲気と場所で単語を覚えませんか? この単語はだいたい真ん中よりも後ろのページの、右の下の方にあった、など。
×前後をつい見る、ということがない
辞書はついつい、前後を読んでおもしろいと感じますが、電子辞書ではそれがありません。
そう、電子辞書は「文字処理」という考え方からは大変優れているのですが、「画像処理」と考えると、全く劣るのです。意味を知るだけであれば、電子辞書でも十分です。しかし勉強、ということを考えると、紙の辞書に勝るものはありません。
このことを考えて、ふと恐ろしくなったのは、今の情報処理体系があまりにも効率化を目指すあまり、過度にデジタル化されていないかということでした。「なぜITは社会を変えないのか」でも、過度なIT化を「トンネル・デザイン」として懸念しています。トンネル・デザインとは、出発点と目標点に向かってトンネルを掘り、一直線に進むために、課程において何も学べない上に、変化に対応できない、ということを懸念したものです。
例えば、子どもの中学でも、ほとんどみんな電子辞書を使っている、と言うことです。また、学校の宿題もタカタカ、とインターネットで検索してやってしまっています。しかし、昔はインターネットはありませんから、百科事典や図書館で自力でアナログで調べていたはずです。
私も自分の学習について、英語も含め、知らず知らずにトンネル・デザインに陥っていたようです。反省して、もう少し紙の辞書などをしっかり使うようにしたいと思います。
2004 12 18 [2.実体験観察から] | 固定リンク
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受信: Dec 23, 2004, 1:23:25 AM
コメント
投稿者: iwasakix (Dec 19, 2004, 4:42:25 PM)
私は新し物好きでムギさんと同様、データディスクマンを利用していました。
辞書を何冊か持ち歩くのに比べるとましですが、常時携帯するには少し重かった。
ですからすぐにコレクションの一部になってしまいました。
今の電子辞書は、かばんに忍ばせておいてもぜんぜん気にならないサイズと重さになったので
本当に実用的で便利ですね。
私が電子辞書を使っていて一番不便に思うのは、「一覧性の無さ」です。
英語の成句などを調べるときに時間がかかります。
しかし、その後は自分の単語帳に手書きで書き込んでいるので、
とりたてて問題になることはありません。
最大の利点はちょっと何か調べたいときに、軽くて身近にある分
紙の辞書よりも手が伸びやすくなったことです。
それまでだったらいちいち辞書を取り出すのが面倒でしたが
電子辞書ではそういうことも少なくなりました。
投稿者: ムギ (Dec 20, 2004, 1:42:45 AM)
iwasakixさん、こんにちは。
コメントありがとうございました。
ああそうですね、確かに電子辞書があると、ちょっと引きたい、と思うときにサクサクっと引けますね。
なので、電子辞書と紙の辞書、やはり使い分けが大事のようです。
そう、EBではディスクの出し入れ、年中やっていましたねぇ(笑)。電池もすぐになくなって、大変でした。ICになって飛躍的に電子辞書も使い勝手が高まったと思います。
電子辞書で一覧性を持たせることはできるのでしょうか? 機会があったら、専門家に聞いてみたいものです。
投稿者: すらごびる (Sep 16, 2005, 12:25:23 AM)
偶然、下記のサイトを見つけました。
http://www.ike1.com/english/tips_page_r04.htm
このサイトで言っている「辞書での周辺のブラウズ」が、電子辞書でトンネル・デザインに陥らない方法として有効なんでしょうか?他に何かないかなぁ?
投稿者: ムギ (Sep 17, 2005, 11:01:38 PM)
すらごびるさん、こんにちは。
あーーー、こういう寄り道はいいと思いますよ。電子辞書はジャンプの機能が豊富ですから、どんどんジャンプして、周辺の単語とかみるとおもしろいかも。
どうでしょうか?
投稿者: 小林範彦 (May 22, 2012, 7:31:25 AM)
はじめまして。韓国語講師をしている日本人です。私が韓国語をを学び、また、韓国に留学していた時は、ずっと紙の辞書でした。特に留学先でのことですが、電子辞書を使っている生徒より紙の辞書を使っている生徒の方が、成績がいい場合がほとんどでした。どうして?という疑問を持ち続けていたのですが、こちらを拝見させていただき、疑問が解けたような気がします。また、私が教えている学校では、ほとんどの生徒が電子辞書あるいは、スマートフォンのアプリからダウンロードしたものを使っていますが、その光景に疑問を持たざるをえません。しかし、明確な根拠、あるいは、紙の辞書が良いという理論的な説明ができずにいました。こちらの記事で今までよりも説得力がある説明ができそうです。
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