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February 26, 2005
Difficult Conversations ~ 言いにくいことを上手にコミュニケーションする
Difficult Conversations: How to Discuss What Matters Most
by Douglas Stone, Bruce Patton, and Sheila Heen
アメリカ在住のJさんから新しいお勧めが届いています。Jさんが何十回も聴いた名作です。日本では「言いにくいことをうまく伝える会話術」という題名で書籍の邦訳が出ています。
同じようなトピックでは、アサーティブについてもみなさんの評判がよく、こういう技術をもっと学んでいきたいと思います。
以下はJさんからいただいたメールです。
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昇給・昇進を交渉する、恋愛関係を解消する、部下に厳しい勤務評定を言い渡す、困っている人に対し力になれない旨を伝える、他人の傍若無人な振る舞いに立ち向かう、圧倒的多数の賛成の中で独り反対意見を述べる、謝罪する...
ハーバード大学の中にnegotiationを研究する部門やプロジェクトがあります。本書はそこの研究者3人によるものです。
職場で、家庭で、または隣近所で、difficult conversations は日常的ですが、往々にして私たちは、difficult conversationsというものを避けて済ませたいものです。で、自分だけで我慢して不満を抱え込む...日本人の心理はとりわけそうかも知れません。
しゃべっても避けてもいずれにしても不愉快、じゃあ、どうしたらいいのでしょうか。著者たちはまずdifficult conversationsには3つの要素が混在していると論じます。
1つ目はThe “What Happened?” Conversation。何が起きたのか、誰が何を言ったのか、本来はどうなるべきだったのか、ということについての意見対立ですが、実際は事実をめぐる攻防ではなく、前提条件、話し手の意図(intention)、誰のせいかというblameなどについて、話しているわれわれが勝手に思い込みを持ってしまうことが問題を起こします。
2つ目は The Feelings Conversation。相手を前にした自分の中の感情をどうすべきか、あるいは押し殺すべきか。結末についてはしょうがないけどただこちらが傷ついたことをわかってほしいのに、というようなケースです。
3つ目はThe Identity Conversation。話題はある仕事の進み具合だったり、隣の家の騒音だったりするが、それらについて話すことが自己イメージや自信、自分の人格というものが揺さぶられてしまうことがあります。
そしてそれぞれに対して、実際のさまざまな会話の例を紹介しながら、ヒントと処方箋を多数提示していきます。その基本線は、表面的な思い込みをできるだけ排し、言いっ放したりあるいは相手をねじ伏せようとするのではなく、 “learning conversations”のスタンスに切り替えていこう、というものです。一部をご紹介します。
例えば、blameの発想からcontributionの発想へ、というのがあります。若手が上司にプレゼンの資料を渡したが、それが違うクライアントへの資料で、上司は現場で大恥をかいた。こんな状況では通常blameの発想で、「お前、何て事をしてくれたんだ、2度とこんなことは起こさないでくれ、もし今度あったら...」となります。
それに対してcontributionの発想では、2人以上の人間が関わっている以上、悪意や怠慢ということとは無関係に、それぞれがトラブルに対して何かしらcontributeしていると考えます。例えばたまたま上司が妙にカリカリしていて、ひるんだ部下が確認したい旨を言い出せなかったのかも知れない、など。こういったことを対話の中から引き出せれば、話は感情的にならず、今後どうしたらいいかが明確になります。
あるいはintentionとimpactを混同しないようにすること。自分のintentionはわかるが相手のintentionはわからない。相手から自分が受けたimpactはわかるが自分が相手に与えたimpactは見えない。そこに思い込みや早とちりを生む土壌があります。「あいつ、俺に恥をかかせようとしてんだな」とか。
また本書では、感情というものときちんと付き合い、押し殺すのではなく注意深く表現することを勧めます。しかしその場合も落とし穴があって、感情表現を間接的にする私たちの癖が、話をさらにややこしくすることになりがちだといいます。
例えば、友達だったらこういうとき普通は何かするものだよ(judgments)、どうしてそんなに冷たくするんだよ(attributions)、お前、何て無神経なやつなんだ(characterization)、君がすぐに返事をくれればいいんだよ(problem-solving)、などと言葉で言ってしまいますが、感情表現は「僕はさびしかったんだ(I felt lonely)」と一人称であるべきなのだ、といいます。
実際にどんな言葉遣いをしたらいいかまで紹介しています。例えば、Can you say a little more about how you see things? What information might you have that I don’t? What impact have my actions had on you? Say more about why this is important to you? など。
本書はあるエグゼクティブ・コーチの方から2年ほど前に紹介していただいたものです。個人的には、聴いた回数でいうと本書のCDは圧倒的にナンバー1です。間違いなく20回以上は聴きました。古い言い方をすれば、昔のレコードだったらもう擦り減って溝がなくなっているぐらいです。
今私はアメリカ国内の職場に身をおいていますが、このCDを聴いて以来、職場での人間関係のマネージが飛躍的にやりやすくなりました。(ついでに言えば家族での会話にも同様の効果がありました。)
英語修得という視点からは、一方でボキャブラリー・文法・発音・ヒアリングなどという技能的なことがあって、他方には現場でネイティブとがんがんしゃべってという実践面とがあります。私は長年この2極の間に何かが大きく欠落しているような気がしていたのですが、このDifficult Conversationsのような内容はこのギャップを埋め得るるものの一つではないかと感じました。ビジネス英会話に即効性があります。
ウエブサイト、www.difficultconversations.comもご参照ください。また、これを書いている今まで知らなかったのですが、邦訳が「言いにくいことをうまく伝える会話術」というタイトルで出ているようです。そんなひどい邦題ではないですが、個人的には白痴っぽい漫画の表紙はやめて欲しかったですね。
(参考-これまでのJさんのレビュー)
blink
How Full is Your Bucket?
Execution: The Discipline of Getting Done
Spontaneous Fulfillment of Desire
What Should I Do with My Life?
Re-Imagine!
The Power of Full Engagement
2005 02 26 [3.英語-Audio Bookのお勧め] | 固定リンク
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コメント
投稿者: エワク (Mar 1, 2005, 2:53:43 PM)
始めまして。ムギさん。
エワクと申します。
ムギさんの作成する分かりやすいHPには、
毎回楽んで読ませて貰っております。
僕もムギさんのような、
分かりやすさをモットーに自身のHPを
作成していきたいです。
さてさて本題ですが、
1つ質問が御座います。
Q:簿記に関するAUDIO CD 御存知ですか?
最近仕事柄簿記の知識が必要で学習しておりますが、
なんせ普段の業務で時間がなく
せめて移動などの隙間時間にでも
学習したいと思っております。
私自身色々探してますが見付りません。
もし、さしつかいなければ
御教え願います。
以上。
宜しく願います。
投稿者: ムギ (Mar 1, 2005, 6:50:45 PM)
エワクさん、はじめまして。
簿記に関するCDですが、財務諸表のものは見た記憶があります。確か日本語も英語もあって、ハーバードからでていたと思います。
あと、専門学校で売っている場合もありますので、大原とかTACに問い合わせてみるのはいかがですか?
また、どうしてもない場合は自分で吹き込んで作る、というのもお勧めです。メールをいただいた方で、この方法で効果が上がったという方が複数いらっしゃいます。
あまり役に立たない情報が多くてすみません。少しでも参考になるといいのですが。
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